身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

Point of No Return.

 和訳を知らない外来語というのは沢山あるが、掲題も、そのひとつではないだろうか。辞書を引いたら「帰還不能点」と書いてあるものもあれば「帰還不能限界点」と書いてあるものもあり、どうも、まだ定訳がないようだ。そして、いずれの日本語も英語の原語のように聴き慣れた言葉ではない。

 この言葉を知ったのは、たしか星新一氏の作品だったと思う。彼は飛行機旅行が好きで、飛行機がポイント・オブ・ノー・リターンを超えたことを意識するというようなことを書いていた気がする。

 脱線するが、今、片仮名で「ポイント・オブ・ノー・リターン」と入力したとき、「オブ」を「オフ」と打とうとしてしまった。とうぜん原語の"of"と打とうとしたからなのだが、例えば「珈琲」と入力しようとすると「コーヒー」ではなく「こうひい」と打ってしまうことがあり、原語に引っ張られるのは他の人も同じだろうと思ったら自分だけで驚いた。

 話は戻り、外来語ばかりで申し訳ないが、「ポイント・オブ・ノー・リターン」と似た存在に「デッド・ライン」(←普段の私は中黒は使わないが英文の読みとして使った)というものがある。こういうものを生き死にとか大仰なものに例えるのは英語らしいなと思うが、昨日のエントリーは、まさに、書ききらなくてはアップできないという鬼気迫った気持ちで書き終えた。

 で、「予約投稿する」というボタンを押して、Twitterに更新情報が流れるのを確認したのだが、時間が過ぎても流れてこない。チェックボックスにチェックを入れ忘れたのかと思ったら、話は単純に午後8時を午後9時だと勘違いしていただけだった。

 1時間、寿命が延びたと思えばいいのだろうが、ろくに力も出していないくせに、焦ったので力尽きてしまい書き直せなかった。これは、逆に、午後8時が、デッドラインではなくポイント・オブ・ノー・リターンだったといえるだろう。午後8時の時点の文章を完成品とするしかなかったのだ。

 

P.S. 大仰な例えの英語というと野球の「マジック」というのもある。私は恥ずかしながら専門学校で、この言葉に対峙するまで意味を知らなかった。しかも、同級生は女性ですら知らない人はいなかった。講師(外国人)に意味を訊いたら、英語で「ミラクルが起こるまでの勝ち数」と言われた。野球というのはアメリカ人にとっては魔法のような存在なのだろうか。