身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

Spontaneously...

 子供じみた話だ。今日は朝から机に向かって本を読んでいて、ものすごく面白かった。面白いといっても娯楽として面白いのではなく、心が突き動かされた。

 そして、何か書かなければならないと思ってPCの前に座ったが何も書けなかった。原稿用紙を出してきても駄目だった。(まぁ、なんで書こうが変わらないけど。)

 最近、好きなことで食べていきたいという相談を受ける。私は好きなことはしているが、それで生計を立てているのではないので、勘違いした質問だと思う。

 しかし、なぜ、私に、そういう質問をぶつけてきたのかというと、非常に簡単だ。好きなことをしたいと思っても、その好きなことがないのだ。

 そして、そういう人に限って高額セミナーに通っていたりする。何を勉強しているのですか? と訊くと、学ぶことが大切なのですと言う。

 本末転倒だなと思った。今日、私は、その文章を読んで、書きたくて書きたくて仕方がなかった。そして、こうやって机に向かっている。

 かつて、私は、物を書きたいと思い、ある映画監督に自分が書いたものを読んでもらったことがあった。自分で書きながら、書いた本人ながら、つまんねぇなぁと思っていた。

 そして酷評された。小学生の作文ではない… 自分にも読者にも誠実ではない… ハッとするような言葉ではなかったが、今でも印象に残っている。

 大学受験の小論文ではないが、何か、完成品を見せなければならないという「やらされている感」があったことは否めない。

 今、私は、書きたいという気持ちで漲っている。そして、もっと良いものを書きたいと思っている。誰にやらせれているわけでもなく、自分がしたいのだ。

 実は、不誠実という部分は、当時はピンと来なかったのだが、今なら解る。感動したことに対する表現に全力を尽くしたいし読者にも理解してもらえる表現をしたい。

 私は文学の勉強なんてしなかったし、大江健三郎なんて端っから読む気もないけど、そんな私でも冒頭に書いたような作品に触れると生きてて良かったと思う。

 大江健三郎どころか公募新人賞の選考にも掛からないような人間だけど、私も、感動を読者に伝えられるように、駄目なら駄目なりに頑張るからさ。