身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

物が売れて損した気分になること。

 昨日、書いたが、メルカリで物が売れた。評価に「求めやすい価格で素晴らしい品を入手できましたこと、感謝しております。」と書かれた。それ以前に感動のメッセージも頂いた。

 ちなみに物は万年筆である。30年ほど前のものだが、未使用の新品だ。高価なものではないのだが、なかなか入手困難になっている。私は、こういう「レア品」の値付けが苦手だ。

 私は、出品者としては、ちょっと高いかな… と思う価格で出品した。購入価格よりは少し高いが、メルカリの手数料と送料を引いたら僅かな利益が出る価格だ。しかし、メルカリで利益が出るということ自体、高いのではないだろうかと思って値付けをした。

 同時に、出品しておきながら、売るのは惜しいなと思ったのも事実だ。損もせず、利益さえ出る価格といえど、当時の定価の半額以下だし、なんせ入手困難ということが大きい。それにお気に入りのモデルの初期ロットだ。

 また入手できそうな気もするが、もうできないような気がする。そういう「一期一会」の物に対する価格だというと、なんか安い気がするのだ。そう考えると、売らなければよかったなと思う。

 もっとも、自分が同じ価格で買うかというと、たぶん、高いと思って買わない。そういう、自分では高い値段を付けたはずなのに、なんか損をした気分になる。そういうものは、もう、値段が高かろうが安かろうが、売った時点で取り返しの付かないことなのだ。

 しかし、今回は転売ヤーではなく、気に入って使ってくれる人の手に渡ってよかった。それだけが喜びである。万年筆にとっては、私の机の引き出しで眠っているより、よほど充実した時を歩んでくれるに違いない。