身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

早とちりとパーカーの筆記具。

 やっちまった… 起きて真っ先に思ったのは、それだった。昨日深夜、メルカリの沼を彷徨っていて、パーカー88の中古の万年筆とボールペンのセットを4,000円で買ってしまったのだが、どうも高いし、思ったものではないような気がする。

 私が使っているパーカーの筆記具のうち、パーカー88というのは、特に気に入って使っていたモデルである。特に気に入っていたから酷使し、万年筆とボールペンのセットだったのだが、万年筆のボディー外装を落としてしまった。

 それは青だったので、改めて黒を買いなおした。そうしたら、今度はボールペンを丸々落としてしまった。結果、青の万年筆、ボディ-外装が取れた青のボールペン、黒の万年筆が手元にある。ボディーは共通なので、本当に落としたのはボールペンのボディーかもしれない。

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上から青の万年筆、ボディー外装が取れた青のボールペン・黒の万年筆

 

 先日、ヤフオク! で青の万年筆の新品が送料込み1,700円で落札されていて、チッと思った。これを入札していたら、青のセットが復活すると思ったからだ。それ以来、パーカー88が頭から離れない。

 ヤフオク! でパーカー88は、ほとんど出ない。落札結果を見ても、それ1つしか出ない。そしてメルカリを探したら見付かって、これだと思って購入したのが冒頭に書いた中古のセット4,000円也だ。

 昨日の深夜、眠剤を服んでからのことである。メルカリのリスト画面をスクロールにスクロールして、やっと見付けたという感じがして、つい購入してしまったのだが、今日の昼に見たら、もっと程度の良い青のボールペンと黒のボールペンのセット1,730円というものを見付けてしまった。

 さて、筆記具の入ったペン立てを見たらインシグニアのシャープペンがあって、シャープペンを買わない私のもとに、どうしてあるのだろうと思ったら、やはり最初はボールペンとのセットで、ボールペンが無くなっていることに気付く。

 これはボールペンだけ単体で使っていて、職場の机に置いて席を立って、戻ったら無くなっていた。私が手に入れた初めてのパーカーの筆記具だったので、ものすごく悲しかった覚えがある。

 この、インシグニアのボールペンとシャープペンのセットを手に入れたのは、今から15年ほど前の中学生のときだった。ある新聞社が応募する小論文だかエッセーだかのコンテストに入選した記念として、私の名前入りの名刺入れとともに貰った。

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 名刺入れは社会に出るまでカードケースとしてしか役に立たなかったが、35年たった今でも、こうして現役で頑張っている。けっこうしっかりした革でできていて、上のノベルティのペンケースと並べると、黒が深いのが判る。

 自腹でパーカーの筆記具を買ったのは社会に出たときである。初任給で村上春樹氏が宣伝をしていたソネットの万年筆を、当時は本店だった丸善日本橋店で買った。誰か忘れたが初任給が出たら日本橋丸善で万年筆を買うというのは文豪が敷いた慣例だった。

 子供のとき、母が使いもしないパーカー45の万年筆を自慢気にもっていて、それに対する憧れみたいなものもあったような気がする。万年筆を買ったら、セットでボールペン・シャープペンと買うようになった。当時のソネットは今のモデルの倍くらいの値段がしたので、なかなか揃えられなかった。

 揃えたところで、あまり私にとって使い心地が良くなく、結局は安いパーカー88を酷使するようになる。そして、パーカー88が使えなくなったら、今度は今の安いソネットを使うようになった。

 結局、30年、ずっと初めて買ったソネットは「お飾り」になっている。今のソネットが使えなくなったら使ってあげようと思う。