身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

社会保障についての知識がある医者に掛かるべきだということ。

 昨晩も母から電話があり生活が千々に乱れている。未明まで眠れず、おかげで昼、机に向かったまま寝落ちしてしまう。

 さて、現在、私は障害基礎年金・2ヶ月あたり13万円で生活している。幸い、持ち家なので生活が成り立っている。しかし、過去にはサラリーマンとして勤務していた時代があったわけで、実は障害厚生年金も受けられたことが最近になり判った。

 ただ、障害厚生年金を受けるには厚生年金加入中に発病したという事実が必要で、実際、病気が酷くなったのは月に200時間を超える残業をしていた某中小企業勤務時代だった。

 当時、掛かっていた主治医は、患者が診察室に入っても顔すら見ず輸入中古車雑誌を読みふけって、こっちが何か訴えても「みんなやってんだろ!」と恫喝するような医師だった(そのくせ、会計時に受け付けにノコノコとやってきて、今度は、病名を変えたから初診料をもう1回、取っておけよと受付を怒鳴りつける)。この医師はネットで大バッシングに遭っているので名前は敢えて挙げない。

 私は頼れる家族もいないし会社を辞めることは即ち死を意味すると思って会社にしがみついていた。しかし同時に、この医者では駄目だとも思っていて、必死の思いで主治医を変えた。

 新しく変わった主治医が、このままでは死んでしまうと、拒む家族に連絡を取り生活費を出すよう交渉してくれて、障害基礎年金を受けられるようにしてくれた医者である。ただ、成年未満の発症にすれば障害基礎年金が受けられるという発想しかなく、保健師の存在も障害者手帳の存在も教えてくれなかった。

 主治医の知識不足なのか、勤務していた時代の医者と揉めるのが嫌だったのかは知らない。ただ、このとき、障害厚生年金を受けられるようにしてくれていたら、とっくのとうに親との縁を切れていたわけである。母寄りの人間は私が何かするのは金のためかと非難するのだが、私寄りの人間は、なに当たり前のことをいっているんだと抗弁してくれている。

 私は勤務していた会社に金の話をしたことがない。私が勤めていた会社はどこも賃金交渉は個人で行なうところだったが(非正規雇用含む)、先輩方が、もうちょっと貰ってもいいのではないかと言っても、私はそれを会社に言ったことはない。いい仕事をすれば評価というのは後から付いてくると思っていたからだ。

 私が動くのは金のためだと非難する母寄りの人間は、だったら無報酬で母の面倒を見らるのかという話だ。無報酬で母の面倒を見ているのなら、人間、金のために働くんじゃないんだねと見直してやっても良い。こっちは、他人どころか生活を脅かす他人以下の人間に関わっているのだから。

 結局、生活を成り立たせるのには金が要るのである。そのための社会保障について知識がある医者に掛からないと、医療費すら払えなくなってしまう(さすがに医療費の自立支援制度を知らない医者はいないと思うが)。医者が生活の面倒まで見ろとは言わないが、それらの制度を知っている医者に掛からないと、つくづく損である。

 私も家族が金を出してくれなかったら生活保護を受ける羽目になっていた。今の私の親だったら、その方が良いという人間も、多々いるのだが。