身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

小説よりTVドラマが好き。① 「ゴーストライター」

 Twitterで出版社などをフォローしていると、「読書垢」と自称するアカウントがオススメされる。そして、プロフィールを見ると「名刺代わりの10冊」というのが明記されているものが多い。Facebookでも、10冊ブックカバーチャレンジなどというものをやっている人がいた。

 自分を振り返ってみて、名刺代わりに10冊も本を並べられるのか。かつて出版社にアルバイト入社したとき、日本一、本を読まない編集者と言われた。しかし、編集者時代、Twitterで出版社にフォローされる立場にいたときは、こんな「読書垢」のオススメなんてなかったけどな。

 私の文章力の源はどこにあるのかと採用担当の編集者は考え込んだ挙句、日記を付けていますか? と言った。私が子供のころは英語で日記を付けるのが英語上達の道みたいなことを言われたが、それが本当かどうかは知らない。ただ、確かに私は日記を付けていることで国語力は上達している気がする。

 小説を10冊も並べられると読んでいないのかと言われているようで何か嫌でもあるが、それは私が本を読まないからであろう。私の幼少を知る人は、私は本を読んでいたというのだが、さっぱり記憶に残っていない。

 そんな私だが、TVドラマは、よく観る。というより精神障害があって映画を観るほど集中力が続かないので、CMを入れて54分という尺は、なかなか私にとっては絶妙である。

 昨日も「アンサング・シンデレラ」を観たのだが、コロナ禍で撮影が捗々しくないのか、今年の春からTVドラマの出来は惨憺たるものである。一方、それを補うようにTVerで昔のTVドラマの再配信をしていて、こういうものがあるせいでBlu-ray Discを買わない気もする。有料でも配信の方が安いし、今は期間に関係なく観られるし。

 昨今、TVerで配信されている中にも私の好きな作品がある。2015年のフジテレビ作品「ゴーストライター」だ。ちょうど佐村河内事件の直後であり、フジテレビの作品ということもあって、あぁ、急拵えのキャッチーな脚本なんだろうな… と思ったら、そうでもなかった。

www.fujitv.co.jp

 

 実際、主人公のようにアームチェア・ディテクティブよろしくふんぞり返っている小説家はいないのだが、やはり脚本家も作家であるので、PCに向かうシーンや主人公が後にゴーストライターとなるアシスタントに指導する様は、いかにも作家で、そういうところにリアリティーを見ているのかもしれない。

 そして、なんといっても演じる役者が好きである。特に主演の中谷美紀さんが好きだ。本作ではないが藤木直人さんとのコンビが絶妙で、「ハル〜総合商社の女〜」(2019年・テレビ東京)では「私 結婚できないんじゃなくて、しないんです」(2016年・TBS)以来の共演となった。ちなみに私は総合商社にも勤めていたことがあるが、あんな商社ウーマンはいないが、商社の構造については良く描かれている。それに、もっと総合職には女性が多い。

 脇を固めるのもベテランのキムラ緑子さんが良いのは当たり前だが、意外なことに三浦翔平さんが見掛けによらず演技が自然だった。私は好きではないが、菜々緒さんや水川あさみさんが好きな人もいるだろう。オールスターとまではいかないが、なかなか粒ぞろいのキャストである。

 主人公の仕事場も逗子にある個人のアトリエを借りて使っており、主人公は鎌倉の自宅からBMWに乗って通勤している。これも左ハンドルというのがバブルの残り香があってよい。中谷美紀さんといえば「あなたには帰る家がある」(2018年・TBS)でも舞台は鎌倉で、なかなか中谷さんには鎌倉という雰囲気が合っている。

 また、このTVドラマは、細かいエピソードはないものの、非常に構成が巧い。当然、佐村河内事件に沿って話は進むが、それは半分過ぎまで。そこから、どうハッピーエンディングに持っていくかというは、なかなか難しいなぁと思うのだが、最終回に大どんでん返しがある。これだけのエピソードを1回に詰め込んで無理がないというのは、やっぱり脚本が巧いなと思う。

 語り始めるとキリがないので、今回は、ここまでにする。気が向いたら、他のTVドラマについても触れようと思う。