身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

昔はパー券を捌いていた高校生、今は情報弱者を搾取する人。

 昨日、薬が減ってから寝が浅く、結局は今日も動けなかった。ストレスが掛かって映画もTVドラマも観られない。唯一、良かったのは、寝が浅いおかげで、少し楽しい夢を見られたことか。そのようなわけで悶々としながらネットを見ていた。

 さて、昔、私を地元・麻布のお友達といって私を客寄せパンダに使おうとした自称プロブロガーなる人物がいた。年収数千万円、麻布の両家の子女で一等地に居を構え外車を乗り回すという生活を見せては金を集めていたという。客寄せパンダに使おうとしながら私には挨拶ひとつもなく、どうなったのだろうかと思っていた。

 見せ金ビジネスに付いていって1,000万円あった貯金が100万円になりましたという人が実際にいて驚いたが、もっと驚きなのが、胴元のプロブロガーなる人物が1,400万円の借金(自称)を抱えているという。成功を手にして再婚までしたと意気揚々としていたのが、実は年収数千万円は妻の金で、金遣いが荒くて離婚されたらしい。借金1,400万円と書き、実際に2間のアパートなどをYouTubeで見せながらも、夜ごと高級寿司を食って酒を飲んでいる姿を見ると、たしかに金銭感覚は麻痺していそうだ。

 5ちゃんねるではイケダハヤトになり損なったというようなことも書かれていたが、イケダハヤト氏の手技というのをザッと見てみると、自分に貢げば金が入ってくるなど、主張としては似ているのだが、それとはちょっと傾向が違う気がする。

 客層としてはイケダハヤト氏ほど切羽詰まった人がいないのだ。確かに高額なセミナーなどは開いているのだが、オンラインサロンは作ったが採算が合わなかったらしい。5ちゃんねるでも、ウォッチャーを名乗る人の書き込みばかりで被害者面をした書き込みはない。上の900万円を失った人の話も、本人が反感を持って書き込んでいるものではない。

 昨日、TVerで再配信が始まった「コンフィデンスマンJP」を観たらウッチャン演じる悪徳土地活用コンサルタント(実は地上げ屋)が「肩書たくさん名声大好き」と形容されていてタイムリーだと思ったが、そのプロブロガーなる人物のプロフィール欄を見ると「複数の職業を持ち多面的に活動するスラッシャー」と書いてある。スラッシャーというのは沢山の肩書をスラッシュで区切る人みたいな意味だそうだ。

 そのスラッシュで区切られたうちのひとつに「イベントプロデューサー」というものがあり、どうも、根はそのヘンにありそうだな… と思った。イベントプロデューサーとは若いときに大きな飲み会か何かをしたために付けた肩書のようだからだ。

 本題以外のことが多く書かれているエントリーなのでリンクは張らないが、私は、このBlogで、鷺沢萠著「少年たちの終わらない夜」の感想として、書かれた当時に高校生から大学生で、私より少し年上、パー券をばら撒いて進学もせず渋谷で屯していた人たちに、それで将来に不安はないのかと感想を抱いたと書いた。その小説の筆者である鷺沢萠氏と、このプロブロガーなる人物の歳は1つしか違わない。

少年たちの終わらない夜 (河出文庫―BUNGEI Collection)

 

 そのプロブロガーなる人物の将来に対する楽観というのが鷺沢萠作品の登場人物と、よく似ているのだ。プロブロガーなる人物のBlogを見ると「どうせ全部うまく行くし」という言葉が頻出している。簡単にいっちゃぁ、根無し草や砂上の楼閣といったところか。付け加えていえば、麻布の人間が遊ぶのは、やはり渋谷だし。

 そういう世代的なものを見ると、そのプロブロガーなる人物は、文春オンラインの記事にあるような、情報弱者を口車に乗せてシャブり尽くしてポイという風に考えているのとは、ちょっと違う気がする。そんなに悪意はなく、楽しい世界があるから仲間に入れて欲しければ金を寄越しな程度の感覚ではないだろうかと思う。その甘さで、イケダハヤト氏になり損なったのか、楡家の人々よろしく本気で麻布のボンボンから出る余裕と思って客が付いたのか、知らないけど。

 末筆ながら書いておくと、パンダ代わりの麻布の地元の人間は、見事、町会の理事が釣り上がったそうだ。そして、私の文章を、プロブロガーなる人物がパクったという疑惑が出たとき、そのお仲間が、パクった人間ではなく私に、どうしてパクられたのか! と電話を架けてきた。また、プロブロガーなる人物は、はあちゅう氏もパンダ代わりに使ったようだが、金の切れ目が縁の切れ目になっているらしい。少なくともパー券でしか繋がらない人間関係を、私は要らないことは確かだ。