身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

年末進行。

 年末である。いわゆる病院なら365日、動いているので安心だと思ったら、病院関係者に訊くと、偉い先生は、きちっと冬休みを取るそうである。「白い巨塔」の外遊に行くからやっておけ! 的なことが今でも起こっているらしい。病院というところは、まだかなり封建的だそうだ。

 私の通っているクリニックは主治医が1人でやっているので、来週の今年最後の通院で出された薬が合わなかったら、2週間、処方を変えてもらうことができない。そして今現在も薬が合っていない。今日は、いつもより早く起き出すことができて着替えて買い物に行くことができたといっても午後5時だ。

 さて、かつて雑誌社に勤めていたとき、年末進行というものがあった。なぜか年末年始は合併増大号を作るという習慣があり、そのために編集者がハードワークに勤しむというものだ。私は書籍出版部にいたので締め切りというのは不定だし雑誌ほど多くなかったが、雑誌の編集者は毎週、締め切りに追われるだけでも大変なのに、年末進行は地獄だといっていた。

 みな、週刊誌なら2週間分、月刊誌なら2ヶ月分の仕事をするくらいだったら年末年始の休みは普通の会社と同じで良いと言う。いろいろな業種で営業時間の短縮や年末年始の休みの増加が叫ばれているが、出版社も、役所と同じ期間、休んでも差し支えあるまい。しかし、コンビニならともかく、スーパーマーケットは元日に休むと正月を通しての売り上げが落ちるというから、休んでも差し支えないと思うが、おちおち休んでいられない。

 他方、平成生まれの人には想像が付かないかもしれないが、昔、銀行のATMは窓口と同じ期間、利用できなかった。まだキャッシュレス決済が発達していなかったから年末に大量の現金を降ろしておかなければならず、給料日後や月末以上の行列ができた。しかし、クレジットカードにカーボン紙を押し当てて伝票を切っていた時代からクレジットカードを使っているが、承認番号は、どのように取っていたのか記憶にない。日曜日に買い物ができないということはなかったので、まさか年末年始は休みだったということはなかろう。

 これらは、社会的インフラとして、年末年始、使えないと困るものの一つだ。そういえば電話会社に勤めていたとき、年末年始に出ると手当てが付いた気がする。あと、これは自分のエゴで開いていて欲しいのだが、元日に明治神宮に行くと、近所に開いている店がほとんどなくて、表参道のスタバなど、ごく僅かな店に客が集中する。これは、ある種の商機でもある。でも、コンビニすら休もうという世の流れから、もっと早く開いている店がなくなるんだろうな。