身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

変な人に動じず。

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 私は殊に変な人といわれるが、世の中の人は多かれ少なかれヘンだと思っている。しかし、今朝は、朝から立て続けに、そういう人を目にして(あるいは遭遇して)してしまった。

 行きのバスでのこと。ラッシュアワーの車内でベビーカーを携えた女性が立っている。ベビーカーから降ろした子供を抱えてバスに揺られ、しかしベビーカーは畳まず、フラついて転ぶ寸前。目の前の座席に座っている人が、危ないから座ってくださいとキツく言って席を立つが、それを聞き入れずに立っている。席を塞ぐように立っているので、他の乗客も座れない。やがて鉄道駅近くのバス停に着き空席が目立つようになるが、それでも座らない。

 バスの運転手が、大丈夫ですか? と車内放送を入れると、他の乗客が、大丈夫ではありませんと言う。運転手は慌ててバスを路肩に寄せて客席に。ちなみに大丈夫ではないと言った乗客は、ベビーカーの乗客とは遠い位置にいて、運転手に詰問されたら、ちょっと言ってみたかっただけですと言う。また、老人に席を譲ろうとした人を、譲らなくていいと制した人がいて、その人が譲るのかと思ったら、年寄りになんて席を譲らなくていいんですと言う。

 バスに1回、乗っただけでトリプルパンチかよ… と思いながらバスを降りて歩いていたら、一方通行を逆走してきた車に後ろからクラクションを鳴らされる。車は前からしか来ないと思っている私はドキリとした。しかし、やがて、前からも車が来て、ここでもイザコザが。

 まぁ、自分が巻き込まれないだけ、よしとするか… と思うが、今度は、いきなり、指を差して、この人、盗撮です! と言われる。当然、身に覚えがない。何だと思ったら、バスの車窓から風景を写したことを挙げて、見ず知らずの人にカメラを向けるのは盗撮です! と言う。いや、風景は人ではない。周囲から痛い視線を感じるが、同じバスに乗っていた人が、この人の言っていることは嘘です! 気にしないでください! と大声を上げてくれた。盗撮だと叫んだ人を捕まえて、警察、行こうか、と言ったら逃げてしまった。

 このBlogをお読みの方なら察していただけると思うが、普段の私だったら、煩わしい、鬱陶しいと思い、1日、それでモヤモヤしてしまうはずだ。しかし、持っていった本を吸い込まれるように読んでしまい、動じない自分が不思議だった。そして、いきなり、同僚に、マインドフルネスという言葉を御存じ? と言われる。宗教じみた言葉だけど、今は心理学的に使われているんですよと言う。私が、そういう状態にあると見たのか。

 でも、個人的には、私が動じなかったのは、席を譲ろうとした人や心配する運転手、あるいは私を庇ってくれた人、そういう人がいるというのは捨てたものではないと思ったからだと思っている。そして、読んだ本に記された、有吉佐和子さんが紡ぐ美しい日本語。本を読むのが遅い私は、やっと第一部を読み終えただけだが、これらの人がいて、この本を読み切らないうちは、私の心は、ちょっとやそっとでは不安定にならないと思う。