身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

居たたまれない。

 理由は判らないが、実家にいるのが堪えられなくなった。私の母は起きるのが正午なのだが、母が起きるなり帰ると言ったら、あれ? 明日もいると思って着換えを洗濯中よと言う。

 実家に来たときはメンタルバランスを崩していたので仕方がなかったが、それが回復しても、なぜか、母の話が右から左へ抜けていく。

 昨日は、それでも母の買い物に付き合い、子供が遊ぶのを見守る母親の感情って、こんなのなんだろうなと思った。まぁ、親孝行と思って母を甘やかしてもいいか… と思ったのだが、なぜか、それに耐えられなくなった。

 正直、十数年も連絡を絶たれていたから、父の心臓が悪かったのも、母が人工関節を入れていたのも知らなかった。知っていれば、色々とできたのに。そんなことを思った。

 帰り、診療所で母の血液検査の結果を聞きに来てくれと言われていたので立ち寄る。午後の診療が始まるまで十数分待ちだと言われて、それさえも堪えられなくなって帰ってきた。

 帰りの電車に乗ったときは、なぜか知らないが、汗がダラダラと出た。木曜日に、実家に行った時も汗をかいたが、それとも違う気がする。実際、金曜・土曜と汗を大量に書いて目が覚めたのだが、昨日から、それがなくなった。

 いつもは長く感じる帰りの電車での時間も、なぜか短く感じた。実際、乗り継ぎが上手くいったせいか、Foursquareのチェックインを見ると所要時間は20分ほど短いのだが、電車に揺られている時間も退屈しなかった。

 電車に乗っている人たちが、すべて輝いて見えた。商社の紙袋を持ったビジネスマン、ヘッドフォンを共有しながら音楽を聴いている女子高生2人、PCに向かってEメールを書いている人。

 PCに向かっている人が大勢いて、そういえばTVドラマ「獣になれない私たち」の冒頭で新垣結衣さん演じる深海昌が忙しさの表現として電車が発車するまでの時間を惜しんで床にPCを置いてEメールを書いていたっけ…。

 なにか、そういう世界が、とても遠い世界のことに思えて、自分は、どうして人並みのことができないのだろうと思う。汗の理由は、そういう焦りからかもしれない。でも、ヒューマンダストでも、駄目なら駄目なりに頑張るからさ。