電話番号を買う話。
前書き
古典的なジョークを1話。ある男性が女性をナンパしようとしていた。「電話番号を教えて欲しい」「それは電話帳に載っているわ」「では、名前を教えて欲しい」「それも電話帳に載っているわ」。
本文
私の家には固定電話がある。昔みたいに、それがないとクレジットカードの申し込みや就職に不利などということはないし、別に廃止してしまってもいいのだが、ファクシミリを送信することがあるから、なんとなく残してある。
回線もファクシミリも、もう使い始めて25年が経つ。ファクシミリが壊れかけていて、固定電話を廃止しようかな… とも思う。
電子メールのSPAMではないが、電話帳に載せていたし(笑)電話番号も25年も使い続けていると迷惑電話が増える。なので、すでに固定電話の回線は、通話はせずファクシミリ専用になっている。
私の家の電話番号は、非常に覚えにくい。教える人教える人に、どうして、こんな電話番号を掴むのかなぁと言われる。また、携帯電話の番号も覚えにくい。
電話を引いた当時、私の電話番号を選ぶ基準が、固定電話だと市内局番が「3」で始まるもの(注・東京では途中で市内局番が1桁増え、従来からの番号には「3」が、増設された番号には「5」が先頭に付与された)、携帯電話だと市外局番が「090」で始まるものだったから、そんな番号しか残っていなかったのだ。
どちらも、なんとなく「昔から使っている感」がして好きなのだ。一種のアンティーク趣味のようなものだ(書きながら、自分でも何か違うと思った)。
東京新聞が「0120-026-999」という電話番号しか取れず、語呂合わせに困り「お風呂でキュッキュッキュー」という謎の言葉を編み出したのは、東京では比較的、有名な話である。
とにかく今は携帯電話番号の下4桁や自動車のナンバーやインターネットのドメイン名は自由に選べるが、そうでない時代があったのだ(インターネットのドメイン名はTLDだけではなく地域ドメインというものも使用しなくてはいけなかった)。
そうなると持っている人から買って名義変更することとなる。私が子供のころ、電話番号の売買というのは、今のインターネットのドメイン名の売買以上に盛んだった。
私が家に電話を引いたときには、まだ電話加入権という権利が必要だった。今流にいうと初期費用を金券にしたようなものか。
金券のようなものなので資産とみなされ、区が税金の代わりに押さえた物をリセールしていて、それだとNTTから買うより1万円以上、安かった。
区が売るというのは、当然、公売であり、抽選や手続きなどで時間が掛かるということでNTTから買ったが、たしか、当時は8万円以上したと思う。
当時は携帯電話が普及していない代わりに公衆電話は沢山あり、架ける分には困らなかったが、勤務先に連絡が取れないと困ると言われて引いた。
長々と書いたが、今より電話を引くということ自体のハードルが高かったので、好きな電話番号を手に入れるのには、かなり金を掛けなければならなかった。
ハードルが高いといえば、冒頭に挙げたクレジットカードを持つこともハードルが高かった。旅行に行こうかと銀行に相談に行ったら、クレジットカードではなくパーソナルチェックという小切手を使ってくれと言われた。
今では映画の中でしか見なくなった、小切手帳からビリッと1枚、引きちぎって使うアレである。
最初にクレジットカードを持ったころでも、まだ、今のように磁気ストライプやICチップをスキャンするのではなく、あの、カード番号の出っ張りの上にカーボン紙を置いて伝票を切っていて、請求が上がってくるのに数ヶ月かかった。
さて、話は現在に戻る。私の携帯電話のキャリアはau (KDDI)なのだが、来たる11月7日に3G回線の新規契約の受付が終了する。
なんとなく、3G回線=安い、という感覚があり、駆け込みで契約しようと思った。そして、中古の端末を買おうと個人売買サイトを見ていた。
auの3G回線は、KDDIの前身となるKDDが国際電話会社だったため、国際ローミングの便を図ってCDMA 2000という他社と違った規格を使っている。なので端末ごと買わないとSIMの抜き差しだけでは対応できないからだ。
この段階で、友人に、スマートフォンでなければ4G回線でも高くないし、今どきキャリアのEメールという時代ではないよと諭されて諦めかけたのだが、そんなときに見付けたのが、売っている電話番号だ。
書いたようにauの3G携帯電話では、電話番号を付与するにはSIMカードだけではなく端末が必要なので、端末として売りに出されていたのだが、ものすごく良い番号なのだ。
3G回線が繋がりにくいのも、よく知っているよ、でも、この「電話番号」が欲しいんだよ、という気持ちで、私にとっては憧れであるステキな電話番号というものが手に入るならと、諦めていた3G携帯電話を持つという欲望が、ふたたび沸きあがってきた。