身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

追い掛ける背中。

 朝4時まで飲んでいて、この時間になっても宿酔いが抜けない。それだけ飲むには飲む理由があるのだが、今日は書くのは控えようと思う。

 昨日、吉祥寺の先生に会いに行った結果だが、先生は出てこられなかった。来られなかったというのは尊敬語ではなく、不可能だったという意味だ。

 しばらく前から奥様が対応されていたのだが、昨日、奥様も玄関先まで出るのが辛いと仰っていた。

 奥様が玄関で、お入りになってくださいというので、私が、門で結構ですといったら、門まで出るのが辛いという。

 先生の家は、大作家といえどお屋敷ではなく、普通の民家だ。それで玄関から門まで出られないという状態なのだ。

 奥様がそうなのだから、本人のことは想像が付く。先生に和菓子を食べさせたいということが独り善がりのことのような気がした。

 そして、夜、友人に会ったときに、その話をすると、あの人、まだ生きてたの? と言われた。

 先生と仰いでいる人間が目の前にいるのだから、ご存命だったのですかくらいの言い方はしてもらいたかったが、事実として、友人たちは、皆、彼が生きていることに驚く。

 しばらく前に雑誌か何かに後期高齢者になったと書いていて、私はそれを、軽いウィットと捉えていた。

 後期高齢者だけどピンピンしてるぜ、という意味で受け取ったのだが、文字通りの意味だったのだ。

 そして、今朝になり、私の母親が車椅子生活になったことを聞く(ちなみに私には兄弟はいない)。

 私は、彼らが他界したら、誰の背中を追い掛けて生きて行けばいいのだろう、と思った。