身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

何がしたいの?

 私は今、これを、新宿の小田急デパートの駐車場に併設されているドトールコーヒーで書いている。

 薬の調整が上手く行かず、午前8時に目が覚める者の意識が途切れ、起き上がれるようになるのは午後9時である。

 しかし、起き上がって、とりあえず着替えて顔を洗うものの、自分が何をすべきなのか全く判らないのだ。

 通うべき会社や学校があるわけでもなく、しかし外界からは何もしない私を責めるように工事の音がする。

 とりあえず外出しよう…。PCでバスの動静を見ると、新宿行きのバスが、すでにひとつ前のバス停を出ている。

 間に合うかな… 私は靴を履き、エレベーターを呼び、バス停に走った。バスはちょうど出ようとしているところで飛び乗ることができた。

 新宿に着いて、とりあえず立ち食い蕎麦を食べた。朝食は摂ってきたのだが、何か食べたい気がした。胃が持たれた。

 さて、どこへ行くか… とりあえず駅前のカメラ量販店に行くことにした。行ったところで見る物もないけどな… と思ったら、持ってきたカメラを蕎麦屋に忘れたことに気付いた。

 カメラ屋では使っているカメラメーカーのコーナーに行って、話題の新製品に触ってみた。買えもしないし欲しくもないし、何の興味も沸かなかった。

 それだけでもう疲れてしまって、穴場のドトールコーヒーがあるのを思い出して、今、そこにいる。蕎麦を食べたばかりだというのにボリューミーなサンドイッチも頼んでしまった。

 カメラを持ってきたのに写真も撮らなかった。もう、自分が何をしたいのか自分でも判らなかった。