身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

老人ホーム。

 実家でドタバタしている中、スマートフォンでこれを書いている。

 自宅に帰ったら過去の写真を張っておくが、実家の周囲では老人ホームが建設ラッシュである。実家のある1画に既に4軒があるが、更に2軒が建設中で、土地面積で占める割合で言ったら半分近くになるのではないか。

 どうして、こんな事態になったのか。昨年だか一昨年だかが町ができて50周年だったそうだが(49歳の私が新規開発のときに1歳で引っ越してきたのだから、そんなものだろう)、当初は市長・マツモトキヨシの威信をかけて高級住宅街として開発された。

 松戸駅までの地下鉄半蔵門線の誘致を勝ち取ったマツモトキヨシ氏は、そこから先、更に延伸を目論んでいた。実家のある町は柏市との境にあるのだが、私の実家のある町に駅を作り、次は柏市にある麗澤大の目の前に駅を作ると、地下鉄が抜けるのにちょうど良い感じである。

 営団は押上までの開通をもって半蔵門線の「全線開業」としてしまったので松戸までも来なかったわけであるが、町は既に出来上がっている。高級住宅街であるから道路は碁盤目状に整備され、高層住宅の建設も禁止されている。なのでマンションは建てたくても建てられない。その結果の老人ホームである。

 外出が制限されているのか知らないが、老人ホームの入居者を街中で見掛けたことがない。なので、その施設が町にとって好ましいものなのか好ましくないものなのか判然としない。ただ、昔は帝国ホテルの料理長などが住んでいた町だったのに、その方向に進化しなかったのは、少し残念ではある。公団の団地があり一戸建ての住宅があり、子供のとき、将来は青山のようなところになるのだとばかり思っていた。