身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

虐待と洗脳。

 肉体的な苦痛はないが、午後5時まで起きられなった。読書もできず(図書館から督促状が来ているのだが返しに出掛けることもできない)、このBlogのエントリーを書くのがやっとだ。書きたいことがあるのだが、どこから書けばいいのか迷っている。やはり冷静になっていられない一連の出来事の一つだからだ。

 先日、テレビ東京のTVドラマ「死役所」で、死役所というのは死者が成仏のために訪れる役所という設定なのだが、母親に虐待されて死亡した少女が、虐待した母親のことを優しいと言い、でんでんさん演じる死役所職員が、松岡昌宏さん演じる代表格の職員に、その理由を訊く(何とかかな? と具体的に訊くのだが忘れた)。

 それに対し、松岡昌宏さん(が演じる職員)は吐き捨てるように洗脳でしょうと言う。自分の妻が洗脳されて新興宗教に入たことに関係してのことだが、吐き捨てたくなる気持ちが判る。洗脳される側には洗脳されていることが判らないからだ。

 私の場合、母親に毎日、夏は40℃を超える自室に監禁されたうえに水も飲ませてくれず、机に向かっていないと殴る蹴るされていたことは書いたが、当時の医療機関というのは熱中症で頻繁に運ばれても何ということもなかった。そういうこともあり、私は特に疑問を感じなかった。

 また、当時の小学校の担任は、自ら「ケッピン棒」と呼ぶ新聞紙をビニールテープで巻き固めたもの常に手にしていて、私の父は官僚という立派な仕事をしているのに尊敬しないと言ってメッタ打ちにされた。私の父は他の職業が続かないから最後の砦として国家公務員になったわけで、それは褒められることではない。

 そもそも、教師が職業に貴賤を付けたり、生徒を殴るためだけの物を持っているということからして今なら即刻クビである。大人になって教師になった知人に話すと、今なら大問題という言葉と、だから彼は学年主任にもなれずヒラで定年を迎えたんだよと言う。それでも私が児童相談所などに駆け込まなかったのは、そういう存在を知らなかったこともあるが、それを不自然に感じていなかったのだろう。

 高校(江戸川学園取手高校)でも同じようなことは経験した。私は学業特待生として入学したのだが、当時の学年主任に頭が良いとは生意気だと言われ、1日中、廊下に正座させれた。自分が受け持ちの授業だけでなく、すべての授業や昼休みもである。担任に相談したが上司には何も言えないと言われた。

 ちなみに、学年主任は後に校長になり、同様なことを部下である教師にして厚生労働省から行政命令を受けている。下記が、そのときの命令書だ。記号が多くて判らないが、Y1が当時の学年主任、Yが当時の担任である。この恐怖政治も洗脳に至る過程ではないのか。

19年2月26日付けで,申立人は,組合通信第9号を発行した。同文書は,「停職3ヶ月処分」と題し,「この停職処分を決定した先生がかつてクラス担任であったとき,厳しい指導のクラス運営であったため,本校最初の退学者を出し,かつ自殺未遂の生徒を二人も出しています。しかし,その先生は停職にはなっていません。」「学校長の判断の結果もあるという要因を隠蔽し,末端の教員にすべての責任を押しつけるということを許してはいけません。」「前回の配布後,新たな組合加入がありました。今回もお願いします。」などと記載されていた。 【甲17の9】

https://www.mhlw.go.jp/churoi/meirei_db/mei/pdf/m10476.pdf

 棄却されることが判っていても訴えたかったのだろう、申立人は彼らが退学者(この文中で触れられているのは恐らく私)や自殺未遂経験者が2名(他の部分でも触れられている人物がいるので、それ以上)いることを訴えている。これも、見ての通り、厚生労働省に情報が入っても他の役所には連絡が行かない。ちなみにY1は現在の法人理事、Yは中等部長になっている。

 今でも電車に乗ると、この高校の生徒のマナーの悪さが目立つが、弱っている老人が乗っていても席を3人分独占して何とも思わないというのは、自分さえ良ければいいという教育に毒されたからだろう。そんなことをしても何とも感じない時点で、すでに洗脳だ。

 私は江戸川学園取手高校初という3年間の授業料が免除だったのだが、両親は、私たちの言うことを聞けば東大に入れてみます、その才能があるから3年間、特別な待遇を用意したんですと甘い言葉に浮足だってしまった。母の監禁は激しさを増し、今になると不登校なのだが、そうなっても車で高校に通わされた。

 何も教えず監禁すれば東大に行けるなどという筈がない。そもそも、その高校の実績として東大に1人か2人、入っただけである。そんなものを信じる私の両親は洗脳されていたのだと思う。江戸取教といってもいいだろう。これも立派な私を虐待するための洗脳だ。今は「教育虐待」と呼ぶそうだ。

 私はサッサと高校を辞めて大検を取るつもりだったが、当時の大検というのは今の高卒認定のように甘い試験ではなかったので、それをネタに私を引き留めようとした。けっきょく私は3年間も、そんな、おぞましい環境にいて精神を病み、病院に、すぐに親から離さなければならないと入院させれた。

 最終的には入院先の病院から普通に大検を取りに行き、普通に1回で合格した。しかし、退院しても実家が帰宅を拒否し、それ以来、父が死ぬまで27年間、1回も実家に上げてもらったことはない。

 私は意志が強い方なので殴る蹴るでは考えは変わらなかったが、同級生で1人、洗脳されてしまった奴がいる。入学時の成績も悪く、地頭が良くないというより出来が悪い方だが、だからこそ自分の意志というものがなく、なんと根性だけで理Ⅲに入ってしまったのである。

 江戸川学園取手高校のホームページでは今でも初の東大理Ⅲ合格者と謳われているが、彼は、そのあと、東大で、ものの見事に落ちこぼれた。やっと薬学部を卒業したそうである。小論文でさえ暗記で済ませる教育で、応用力など備わるはずがない。洗脳されて自分が東大に入るほど頭が良くないという現実が判らなくなったのである。

 虐待を教育とか躾などといって正当化するという言葉をよく聞くが、この江戸川学園取手高校がやっていたようなことが教育や躾といったら、それは即ち洗脳である。