身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

酒に逃げる。

 長年、トラウマという言葉が理解できなかった。嫌な思い出のひとつやふたつ、誰にでもあるんじゃないの? と思っていた。

 ずっと読んでいただいている方はご存知かと思うが、ここ数日、私は過去の嫌なことを思い出して、どうしようもない気分になっている。

 それらは、単なる「嫌な思い出」どころでなく、本当に私を押し潰すのではないかという苦しみを与えてくれる。

 しかし、昨日、その「嫌な思い出」を客観的に見られるようになったのに、いや、客観視できるようになったからこそなのか、それらの重みというものを実感している。

  少し前に、酒が合法なのは作るのが簡単なだけで、身体への悪影響は合法な向精神薬以上ではないだろうかという話を書いた。

  そういうことを鑑みて、本当は酒で解決したくはないんだけどな… と思いながら、それ以外の方法は見付からない。

 何度も書いているが、酒を飲むと、時間を無駄にした感じがする。優れた文学作品や音楽に触れて、納得することで解決するのが楽になる一番の方法だと思っている。

 だが、結局は飲んだ。今も酒が中途半端に残っていて、迎え酒をしようかと思っている。

 そして、酒を飲みながらネットを見ていた(酔っ払ってコメントした方、ごめんなさい)。飲みながらも自分を楽にしてくれる文学を求めているという、かなり強欲な私であります。

 ここのところ、私を楽にしてくれるのは、鷺沢萠さんだ(以降、敬称を改める)。彼女の生前に作品に触れておかなかったことが非常に悔やまれる。

 ご本人の公式サイト"Office Meimei"は管理人の「渡部さん」によって維持・管理されているされているが、日記は非公開にされている。なので孫引きになる。

人間は、「自分にはとうてい理解できない、とうてい手に負えない」というような事実に直面したとき、それに直面したくない一心で、たとえば酒を飲んだり麻薬に走ったりする。

 自分で、なぜ、こんな当たり前のことを控えていたのか解らなかった。鷺沢先生がいうのだから鬼に金棒という気がしたのかなと思った。

 しかし、それを引用したサイト(あえてURLは伏せる)を見て、あぁ、と思った。そのサイトでは「クズ人間」と大きく題して上の文章を引き

普通、手に負えない事実に直面しても、酒やギャンブルはやるかもしれないけれど、麻薬はやらないと思います。(中略)つまり鷺沢は人間のクズなのである。

  と書いている。私は前述のように酒と麻薬は同類だと思っているので、酒を飲むかもしれない人間が非難することに納得がいかないし、そもそも「かも」というからには、そういう事実に直面したことすらないのだろうことにも納得がいかない。

 さらに納得がいかないのは、死んだ人間を馬鹿にしたり叩きのめしていることである。

 これも繰り返し書いているが、私は、鬼の首を取ったように本名や顔写真まで公開されてネットでバッシングされたことがある。

 私の場合は、バッシングした人間が自分の功名心で身元を明かしていたため対抗措置を取って、その人物は社会的制裁を受けたが、このサイトは匿名で、誰に文句をいっていいのか判らない。

 日記を非公開にするのに十分な理由である。しかし、それは非常に惜しいことだと思う。私みたいに、鷺沢先生の言葉で慰められている人間がいるからだ。

 鷺沢先生、辛かったんだろうな。「手に負えない事実に直面」することが多かったんだろうな。死にたくもなるよな。

 そんな、生前に苦しんだ人間を…。その苦しみを糧にして私のような人間を救ってくれる人間を…。

 なんか、また酔っ払って訳が解らない文章になってしまった。でもさ、サイト管理人の渡部さん、私みたいな人もいるから、ね。

 

 

P.S. まだ拝読していませんが、鷺沢先生がWebに載せていた日記には、書籍化されたものもあるようです。数冊、出ているようで、これが、いちばん古いのかな?

 

サギサワ@オフィスめめ (角川文庫)

サギサワ@オフィスめめ (角川文庫)