身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

暑い夏は嫌いだ。

 前にも書いたが、嫌な思い出というのは都合よく忘れる。きっと、そうしないと、その思い出に押しつぶされて生きていくのも困難になるからだ。なので、それを思い出して書くことは苦痛だ。

 それは私が小学生時代の日々のことだ。私は、来る日も来る日も、自分の部屋に幽閉されていた。気温が40℃を軽く超える部屋で、私は机に向かわされていた。クーラーが付いている部屋に行くことも禁じられた。

 母親は抜き打ちで様子を見に来るので、サボるわけにもいかなかった。トイレに行く回数も制限された。前に書いたように私には多汗症の気があるのだが、汗をかくからと水分補給も制限された。

 後に、母は他人に対して、有は、病院に連れて行っても点滴ひとつで治ってしまう程度のことで頻繁に倒れるヤワな奴だと言っていたそうだ。私は倒れた記憶がないが、そんなものは簡単である。熱中症だ。

 子供らしい遊びも知らず、漫画もTVゲームも知らない少年だった。小説でさえ、読んでいたら破り捨てられたことがある。そして、同級生からは、お前のカァちゃんキチガイと虐められた。

 

 まだ書き足りないことは沢山あるが、夏になると、そんな嫌なことを思い出す。だから暑い夏は嫌いだ。