身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

Those Blues on Parade...

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 朝の連続テレビ小説を見ていて胸が痛くなった。今回は肉体的に心臓が痛むのではなく心を痛めただけで良かったが。

 夫を失った主人公の安子は、子供を置いて再婚しろという義父母の元を離れて終戦直後の大阪に出、そこで苦労する。

 一方、ドラマの通奏低音として、相変わらず"On the Sunny Side of the Street"が流れている。これは、はたまたアイロニーかと思うほど対照的な現実。

 他人の苦労を見て、何が楽しい。

 先日、某所で料理家が、菓子を作りながら「美味しゅうなぁれ、美味しゅうなぁれ」と呼び掛けていれば美味しくなるんだってさ、と笑って話しているのを聞いた。

 Sunny Sideを歩いていれば人生がSo Sweetになるんだったら結構なこと、人生は、そんなに甘くはない。馬鹿にした話だ。

 日陰を歩いていて暗いことが続いたとも歌詞にある。道の陽が当たるところを歩いていれば一銭も持っていなくてもロックフェラーになれるともある。

 しかし、安子は陽が当たるところと思って出てきた都会で苦労をし、貧乏なためにカツカツの生活を強いられる。

 そう考えるとSunny Sideのなんと少ないことか。人生は、ほとんどがIn the Shadeで、陽なんて、ほとんど当たらないのかもしれない。

 それでも人は願う。Sunny Sideを歩きたいと。Sunny Sideを歩いていれば、人生はSo Sweetになるという幻想を抱きながら。