身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

引っ越しても通いたい店。

 このエントリーは昨日、書いたものです。昨日は世界メンタルヘルスデーということで他の文章に差し替えました。

 


 

 引っ越しても電車で通いたい店というのは多くの人にあるだろうが、その店に通うためだけに近所に引っ越したいという店はなかなかない。

 一関に「ベイシー」というジャズ喫茶がある。あるといったところで未訪問だし訪れる予定もないが、なんと色川武彦氏は、この店に通うために東京から一関に引っ越したという。

 私が通う渋谷の喫茶店も、そんな、引っ越すのなら、絶対に、この店に通えるところにする! と思う店だ。

 ここのところ眠剤が合わず、昼過ぎまで起きられない。訪問看護師に、夜、熟睡できるように雨だけど渋谷まで出てみましょうか… と言われる。渋谷に行ったところで山手線の内側には足を踏み入れない。渋谷に行く目的は、純粋に、この店に行くためだけである。

 普通、土曜日・日曜日は、この店に来ない。物凄く混むからだ。この店は会社形式になっていて、正社員の店員が4人いるのだが、4人とも店に出ていて、さらにアルバイト契約(といっても、私が通い始めた数年前からいるし、かなりの時間、店に出ている)の店員が複数いた。

 さらに、今日はオーナーが洗い物をしていた。1日に1回は顔を出して手伝いをしているようだが、これだけ本格的に店を手伝っているのは滅多に見ない。土曜日の混雑を物語っている。

 混雑を物語っているといえば、私も入店まで30分ほど待たされた。店に行くのと同じ時間、待たされたわけだが、それで帰ろうとか他の店に行こうとは思わない。

 ここにいると落ち着く… という人が多いようだが、以前も書いたように、落ち着くというから行ったものの店が煩いというネットの噂が流れている。それは、入店に30分待ちの客の量に加え、カウンター内では電動ブレンダーを回してケーキを作っているからだ。

 このケーキが旨い。私は普段、チーズケーキを食べるが、売りはシフォンケーキである。作り立てなのでシットリしている。そして、自家製のためか安い。料金の計算が面倒なのかケーキは均一500円である(写真はチョコバナナのシフォンケーキ)。

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 混んでいたって煩くたって、妙に落ち着く。ちょっと前までは本を持って行って読んでいたのだが、最近、本を読むのが苦痛になってきたこともあって、店の雰囲気を味わうようになった。

 本を読めるだけの喫茶店なら、どこにでもある。私は、この店の常連だから滅多な店に行かないだろうと友人に言われるが、ドトールコーヒーショップのヘビーユーザーでもある。

 ドトールコーヒーショップのコーヒーも、コンビニのコーヒーでも、あの値段で、あの量と味を出せたら大したものだと思う。しかもドトールコーヒーショップWi-Fiも完備である。

 なので、この店のどこが好きなのかというと、やはり雰囲気ということになろう。そして、雰囲気を楽しむためには本など要らないのだ。

 最後に、今日は珍しくコーヒーを2杯飲んだ。私は、不思議と、どんなに寒くても最初はアイスコーヒーを飲む。2杯目はビンテージを飲むかブレンドを飲むか迷ってブレンドにした。ビンテージといえば、銀座のビンテージ発祥の店も同じような雰囲気である。

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