身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

文化は遠くなりにけり。

 子供のころ、松戸といっても駅でいうと北小金駅であったが、松戸に住んでいた。週末、遊びに行くのは渋谷。チバラキといっても千葉県までは、子供は東京に遊びに行くのが当然だった。柏は千葉県の渋谷などといって、そこに屯しているのは、もっと遠く、茨城県の土浦あたりに住んでいる人たちで、当時の柏は渋谷より限りなく茨城に近かった。千葉の渋谷になったのは、渋谷に行っていた人たちが柏に滞留するようになってからである。

 北小金駅からは地下鉄千代田線に直通の電車が走っている、というか、それしか走っていない。常磐線なのに上野には乗り換えないといけないのである。なので、青山・原宿には乗り換えなしで行ける。それでも1時間は掛かり、今になると、そのような長距離を遊びに行っていた理由は不明なのだが、表参道駅外苑前駅で降りて、スパイラルや嶋田洋書から始まり、ギャラリーや洋服屋を巡って渋谷まで歩いた。

 スパイラルではWWWに初めて触れたが、何を見ていたのか、まったく記憶がない。しかし、当時は、それなりに楽しんでいたのだと思う。少なくとも、"woke"な意識高い気分で行っていたのではない。ただ、今になると何が楽しかったのか、よく判らない。というのは、最近は、読書どころかTVドラマさえ、観るのが苦痛だからだ。今日、Spofityでポットキャスト番組「ホントのコイズミさん」が流れてきたのだが、そういう文化的な人たちとの触れ合いが、あたかも遠い世界の出来事のように思えて、今の生活は文化的な生活とは程遠いなと思い知った。