身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

大変な仕事。

 今、私は勤めを辞めて、収入は生活保護のそれとほとんど変わりがない。家賃を払う立場になったら生活保護を受けることになる。そんな私のところに来た友人が収入の話をする。今、50歳にして年収500万円なんだよね…。そう言われても、私には、それが高いのか安いのか判らない。

 また、寓居マンションの管理人を見て、あの人、月収30万円貰っているのかな? と言う。私としては、毎日、朝早くからゴミ出しをして… ということを考えると、それだけ貰わないと割りが合わない気がする。

 割りが合わないと思うのは、私が勤めていたとき、若いときでさえ、もっと給料が高かったからだ。私は貿易実務の専門職で、私が勤め始めたとき、派遣というのは専門職、いわゆるエキスパート派遣しか認められておらず、時給は3,000円以上した。業種転換を図ったが、結局は元の仕事に戻った。

 楽と言うと語弊があるかもしれない。水に合ったというのか、どんどん高度な仕事をしていった。そして、コンピューターシステムの仕事も兼務することになった。もっともこれは、事務系の専門職なのに事務処理能力がなく、単純な仕事を大量に熟(こな)す方が困難だったせいもある。

 今は規制緩和でなくなったが、当時は国家検定がある仕事だった。当時の名残りなのか、今は憧れの仕事ということで希望者が多くなり、給料はむしろ安い方だという。しかも、雇う方も安く使うことばかり考えて、さほどスキルは必要とされていないようである。物流事故が起こったときに悲惨らしい。

 そのような私から見ると、ゴミ出しから掃除から多岐にわたるマンションの管理人という仕事は、とてつもなく大変である。朝から晩まで机に向かって電話を架けて会議をしてという自分の仕事からは想像を絶する大変さである。

 他方、ビジネスというのは良く言ったもので、貿易実務の仕事というのは忙しくてナンボである。荷物が搬入された当日に梱包して、その日に通関して同日の飛行機に載せるということが恒常的にある。下手したら梱包が上がる以前に飛行機の船腹をブッキングしなくてはいけない。しかも、客からの金の回収もある。

 現場の人間が私たちの部署に見学に来ると、よくあんなに忙しい仕事としているよね、自分にはできないと言う。都会のネズミと田舎のネズミではないが、狭い世界でも、色々な仕事があるものである。その仕事を大変だと思うか思わないかは、結局は水が合うか合わないかなのだろう。