身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

バーに人は戻るのか。

 このBlogでも常々説いているのが酒の効能である。現実が抱えきれなくなったとき、これほど簡単かつ遠くまで逃避できるものはない。私の主治医も患者には禁じながら自分は酒を飲むのだが、即効性があり加減ができる点で(のみ)向精神薬より効果があると言っている。

 しかし、である。コロナ禍が始まる以前から、どうもバーに活気がない。居酒屋や自宅で飲むように完全に酔っぱらうまで飲むことはできないが、「適度な場所まで」逃避するのに最適な場所である。

 現在、ホテルのバーは開いていないが、コロナ禍が始まって2つほどバーに行く機会があった。私は酒を飲みに行くのではないので短縮営業と関係なく早い時間に行ったのだが、両方とも先客は1人であった。

 1店は道玄坂のパチンコ屋の地下という判りにくいところにあるが、先客はひとり。1店は銀座7丁目の路面に面しているという微妙な立地条件のところだが、こちらも飲みに行く前に軽く咽を潤している老人がひとり。

 銀座の店で、今、どこのバーに行っても昔みたいな活気がないという話をした。そもそも両店とも彼らの師匠の店に通い始めて以来の付き合いで、彼らが独立した時期は精神病も酷くてバーから遠のいていた。

 なので、どうしても、右から左から注文が入って… という彼らの師匠の店がバーのあるべき姿という感じがするが、コロナ禍が始まる以前から、そういう活気がないのだ。湊さんはバーの全盛期を知っているから… と言われたが、バーというのは、なかなか文化的な香りがする良い酒場である。

 コロナ禍が収まったら、喫茶店に通っている人は、ぜひバーに足を伸ばしてほしい。最近は、襟が付いているシャツで行かなくても断られる店も、おそらくないし、値段的にも居酒屋とさほど変わらない。バーの全盛期が再び来ることを願う。