身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

もうすぐ葉桜忌

 4月11日は鷺沢萠(故人は敬称略とする)の命日、通称・葉桜忌である。2004年に35歳で没。当時は読んだことがないのに著書が家にあったのは、おそらく行動範囲が似ているからだったろうことは書いた。病気さえしていなければ会えたかもしれない、惜しい思いの1つだ。私も個人サイトをやって他人と繋がっていたし。

 葉桜忌という名前は、同氏に同じ季節を舞台にした「葉桜の日」という作品があることにちなむが、それが命日の名前というと、何か、あまりしっくりこない。作品自体は、生涯のテーマといえる在日韓国人の問題と出自の問題、そして貧富の問題と、鷺沢萠らしいテーマを扱った作品で代表作といってもいいだろう。

 しかし、鷺沢萠作品の根底に流れるエレジーはシンプルなほうが良いと私は思う。そして、今日の通院に、先日、書いた「遮断機」が入っている「さいはての二人」の文庫本を持って行った。そして、帰りにドトールで(他の店が閉まっているからか意外にも混んでいた)読み始めたら、何か暗くなって店を出てしまった。

 鷺沢萠が亡くなり、その舞台も変わり、暗い歴史も新しい歴史も塗り替えられていく。あまり知られていない話だが、高輪ゲートウェイ駅ができて、あの一体の地名も港南や港北から高輪になった。寓居もバイパスが通って白金から高輪になっている。

 町が変わるとともに縁もゆかりもない人たちが住むようになるんだろうな… と思うことは仕方がないにしても、それが金を持っている・持っていないだけで振り分けられるというのは悲しいことだなと思った。しばらく私は鬱になるだろう。

 

P.S. 参考・日経新聞・文学周遊 鷺沢萠「川べりの道」

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