身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

女優と身持ち。

 最近は読者も辟易というか無関心というのが増えてきたが、彼らの身持ちの硬さというのは、ずいぶん我々とは違うなと思ったことがある。

 もう30年近く前、文壇のパーティーなるものに紛れ込むことがあり、そのとき、国民の誰もが名前を知っている女優がいた。当時で40歳くらいか。

 連れてきた映画監督と、そういう仲だったと思うのだが、ふと、何の脈絡もなく、私は、あなたより「清い」生活をしているのよと言われた。

 何を言っているのか判らず、どういう意味か訊き直したら、だって、同時に何人の人とも付き合うことはできないし… と言われた。

 いや、私は興味はないし、それは普通ですって…。しかし、その女優は、その映画監督とのことを雑誌に書かれたことはなかった。妙な思い出だ。