身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

親が子供のことを思うのは当たり前という風潮。

 今では児童虐待などの問題が出てきて、当たり前ではないということが当たり前になりつつあるが、私が子供のとき、そういう風潮があった。

 そんなことを思ったのは、昨今の母のこと。ケアマネージャーが不正を働いているとか家に上がり込んで印鑑を勝手に押して行っているとか、挙句の果てに、仕事納めが過ぎてから上がり込もうとしたところを見付けたら逃げ出したとか言うようになった。昨日、母のところに包括支援センターの職員から電話があって、ケアマネージャーが辞めますと言う。それで、母は、見放されたと思わず、不正がバレたのだと、水を得た魚になって同じことを繰り返し喋っている。こっちとしては何ヶ月も同じことを聞いてウンザリだ。

 以前、私は成人式に出してもらえずに灼熱の部屋に監禁されていて、そのくせ、いい成人式だったんですってなどと言われたことについては書いた。このように母の妄言は今に始まったことではなく、子供のころ、お前の母ちゃんキチガイと、よくイジメられた。

 今回のことで嫌なのは、ケアマネージャー曰く、母が、それを警察にも言っているということだ。私も子供のときに何かにつけて警察を呼ばれて嘘を付かれ、最後には警察官に殴られた。新規で思い出すと苦しくなるので既述のことを書くと、40℃の部屋に監禁されて倒れ、そこから逃げようとすると親に殴る蹴るされ、その手を振り払っただけで家庭内暴力だと110番された。

 今になるとトラウマだと断言できるが、ずっと嫌な記憶として頭に張り付いている。独り暮らしを始めてから、何だったか警察に用事があって警察官と対峙したら恐怖で泣いてしまい、理由を話したら、警察官が殴ったのですかと、そのときの警察官が絶句していた。言葉に困って、警視庁は千葉県警とは違いますと言われたが、組織が違うというより、親は子供のことを思うのが当たり前という風潮があったからではないか。もっとも、それ以来、警察官がパトロール中に会うと声を掛けてくれたりして、それは千葉県に住んでいたときはなかったことだ。

 今までかかった複数の精神科医が言うには(この前、TVドラマ「シャーロック」でワトソン役の精神科医も言っていたが)他人が傷付くことに快感を覚える人物は多いそうである。ある精神科医は、例として、子供のとき虫獲りをしていて獲った虫を片っ端から惨殺している人っていませんでしたか? と訊かれたのだが、幸い、私の周りにはいなかった。それとは違うが、合法的に犯罪を働けるから警察官になりたいと言っていた奴がいたが、どうなったのだろう。警察官の話で、ふと思い出した。

 そういう、他人を傷付けようという意図が察せられれば、まだ、この人は子供のことを思っていないのだなということが判るのだが、自分が言っていることを正当化するために子供をスケープゴートにするというのは、なかなか見破られない。この経験すら、話しても、他人に迷惑を掛けたくないという親心が判るという人がいた。親が子供のことを思うのが当たり前というのが前提では、単なる妄言が理由で子供を傷つけているなどというのは信じられないだろう。