身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

ふらんすへ行きたしと思へども。

 正月は、文字通り1歩も実家を出なかった。先ほど帰ったのだが、もう、体調が悪くて吐きそうだ。母はケアマネージャーが留守中に家に上がり込んで書類を持って行ったとか煩く、結局、ケアマネージャーが辞める事態となった。何歳になっても親のことを話していると恥ずかしいなどと言われるが、そんな親に、言うことを聞かないと殴る蹴るされて育った身にもなってみろ。

 さて、帰りに乗ろうとしたバスは2分早く出て乗れず、しかし、次のバスは8分遅れた。同じ場所を何系統も走っていて、それぞれに時刻表が違うから、何分間隔で走っているのか判らないが、おそらく10分ていど。つまり、20分ほど待たされた。10分間隔で来ると思っているので誰も時刻表に合わせて家を出るなどということはせず、バス停は、ちょっとした人だかりで運転手さん恐縮しきり。

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 北小金駅は旧水戸街道の小金宿にあり、多くのバスは旧街道を走るのだが、たまぁに「ハワイ通り経由」というバスが来る。駅前は駅の目の前よりも旧街道沿いに栄えている。最近まで駅前に神社があって駅前広場がなくバスが入れなかったくらいだ。なので、このバスに乗ると旧街道にある銀行などに寄れない。

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 この通りは私が子供のころから存在していたが、ちょこちょこっとシュロが生えていた程度。市のホームページにも

現在の国道6号線(旧小金消防署前)から小金交番に向かう通りです。シュロの並木が植えられ、南国風の雰囲気が感じられるところから、ハワイ通りと呼ばれていました。

とあり、すでに過去形だ。それ以前に、このバス表示のスペルが"Hawai"である。そもそも、「駅」は"Station"になっているのに「駅入口」が"Eki Iriguchi"である。また、この「ハワイ通り」を通らないバス(旧街道を通るバス)は路線が環状なのだが、なぜか外回りと内回りといわず、右回り・左回りという。昔、住んでいた私でも判らず、路線図を見ると、なおさら混乱する。

 

 実家で何をしていたのかというと、本を持って行かなかったのでTVばかり観ていた。実家を出る直前も路線バスの番組を観ていたが、女優さんが海外に行く番組も観ていて、それらの番組は、そこで何か特別なことをするわけではないのだが、なんとなく興味を惹かれた。何回か書いているが、私は海外に行ったことがない。それでもサラリーマン時代は年に数回、飛行機で飛び回っていた。もう、飛行機に乗るのが目的みたいな旅で、飛行場からレンタカーを借りてドライブするのが好きだった。

 それが、今や松戸に行くのが精一杯で、車など20年以上、運転していないから、エンジンをかけてサイドブレーキを解除して… などとイメージしても、出発のとき、どの方向を確認すればいいのか? などと迷ったりするので、おそらく、出発、即ち衝突事故である。そんな私でもアクセルとブレーキの踏み間違いというのは理解できず、その程度の自信で運転など大それたことをするなと思う。

 しかし、逆に海外から日本に来た人の番組もしていて、やはり海外旅行というのは、今になっても、ちょっとした出来事なのだなと思う。昔、友人を空港に送りに行ったら、クレジットカードもパスポートもあるんだから、そのまま一緒においでよと言われたことがある。これも何回も話すが、それらのものは海外貿易の仕事をしていたから持っていたもので、クレジットカードさえ持っていない人の方が多かった。

 当時から、業界の交流会などで名刺を交換すると、海外は長いのですかと訊かれた。日本を全く出たことがないと言うと驚かれ、海外に行かずに、それらの仕事をしていたのが稀有なことだった。海外赴任を経験しないと出世もしないので、永久にヒラであります。

 当時は取引先から、今はFacebookの友人から、遊びにおいでと誘われるが、そんな怖いことはできない。フィリピンのセブ島にも友人がいて、その人は私の健康などを気遣ってくれて、セブ島に来れば精神病など飛んで行ってしまうよと言われるのだが、飛んでいく前に日本語が通じる医者がいないというのが怖い。英語が話せるでしょともいわれるが、何度も書いているが高校の英語の偏差値が30だった私の話す英語というのは、かなり怪しい。

 その友人は、私の英語を平易で判りやすいというのだが、ボキャブラリーがない部分を言い換えているに過ぎない。私がフランスに行けない理由は「ふらんすはあまりに遠し」ではなく、精神病があるからだ。このことは、海外に行こうと思ったときに、もっとも呪う出来事である。蛇足だが、韓国人は英語を話せるというが、彼らの英語は、私と同じくらい怪しい。