身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

酒が飲みたい。

 昨日、頭痛がした人が周りに多く、どうも気圧のせいらしい。気圧のせいといえば、気圧によって酒というのは酔い方が大きく変わる。しかし、酒を飲まなくなると、こんなときは良い酔い方をするのか悪い酔い方をするのかすら忘れている。

 酒が飲めなくなって久しい。飲めない理由が金がないなどという単純なものならいいが、原因は精神である。少し飲んだだけで恐怖に襲われ冷や汗を大量にかく。友人に飲めなくて羨ましいと言われるが、飲めないと損なことが多い。実際、そうやって酒の席に誘われても、ご一緒できない。

 レストランのメニューが酒とペアで考えられているということもある。先晩、ステーキを食べに行ったのだが、なんと、その店はドリンクがアルコールしかしなく、隣の席にいた女の子が、バイクで来たんだけど、どうしようと言っていた。セットでビールを付けると安いのだが水で我慢だ。

 久しぶりに酒が飲みたいと思ったのは、色々なバーから年末年始の営業の案内が送られてきたからだ。酒が飲めなくなって、高いウィスキーは、すべて、それらの店に寄付してしまったのだが、今日、ニッカウヰスキー竹鶴35年が60万円で取り引きされているというニュースを耳にして、ウィスキーを飲んでみたくなった。

 かつて、葉加瀬太郎氏が、話のネタにマッカラン50年100万円なりを買って飲んでみたのだが美味くなかったと話していた。葉加瀬氏は、私が知っていたときには広尾のウィスキーが売りのバーの常連だったのでウィスキーの味覚は確かだと思うし、マッカラン50年など、飲まなくても味の予想は付いただろう。

 バーでウィスキーを飲むことのメリットは、ボトルを1本、丸々買って来なくても、いろいろな種類のものを飲めることだ。自分で飲むときは安いブレンドのスコッチウィスキーをソーダ割りで飲んでいるが、シングルモルトの飲み比べなどは、バーで酒を飲むときながらの楽しみといえるだろう。

 バーに置いていないせいか、私はワインが判らない。友達がサイゼリヤで安いからと頼むものが、せいぜいだ。ワインを飲む友人は、2,000円しないで美味しいのが一杯あるよ! と言うのだが、美味く感じるのは、酒自体ではなくスパークリングワインの泡くらいのものだ。

 バーに置いている酒というとビールがある。しかし、あまり知られていないが、バーが生ビールを置くようになったのは最近のことだ。私はビールが大好きで、したたか酔ったときに飲むギネスなど、アイスコーヒーを飲んでいるような気になって好きだ。また、最近は、大手ビール会社も下面発酵ビールを出しているのが嬉しい。

 寓居の1階はコンビニなのだが、あれだけ冷えたビールが各種あると、もう天国だ。スーパーには置いていないコンビニ限定のビールなどもあるので、スーパーや酒屋でビールを買うことはなくなった。それだけビールが好きだと、逆に少しぐらい不味くてもビールならいいやと思うことがあるのだが、どうしても第三のビールとか新ジャンルと呼ばれるものは駄目だ。

 同様に、缶チューハイも駄目だ。酒というのは、ただ酔えばいいというものではないと思う。薬ではないのだから、不味いものを我慢して飲まなくてもいいと思う。この前、精神病の辛さを知らない人は、それを理解できないだろうと書いたが、酒を飲む楽しみは、知っておいて損はないと思う。