身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

透ける定番。

 翻訳をしている人の間で、よく「訳が透ける」という言葉を使う。訳語が不自然で原文が透けて見えるという意味だが、代表格が「最も○○のうちの一つ」だ。日本語では「最も」は1つしかないから、そのうちの…というのは不自然だ。

 やはり代表格に「勝るとも劣らない」があるだろう。これは日本語自体に不自然なところはないが、私は英文の訳としてしか使ったことがない。しかし、なんで、こんな使わない日本語で知識を持っているアピールをしないと中学校のテストでは点をくれないのだろう。

 今日、映画の宣伝を見ていて、これも定番の「全米が泣いた」「日本が涙した」と並んで「原作○○万部突破」というのがあった。これも、突破としか訳せないのかと思う。

 自分だったら「最も○○のうちの一つ」は、「○○中の○○」と訳すだろうか。「勝るとも劣らない」は「それ以下ということはない」といったところか。「○○突破」は、「○○越え」といったところだが、映画のキャッチフレーズという立場から、自然な訳は必要ないかもしれない。

 これらの「不自然な訳語」から原語が透けて見えると思うので、あえて原語は載せずに書いてみた。皆さんも、それらの自然な訳を考えて欲しい。