身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

クァラクェン?

 標題は外国人(おそらくアメリカ人)の発音だが、元の日本語は何だか、お判りだろうか。実は「後楽園」である。地下鉄目黒駅で電車の乗り場に迷っている外国人がいて、"May I help you?"と訊いたら、「カラクェン?」に行くには何番線の電車に乗っていいか教えて欲しいと言う。私は理解できずに路線図で駅を指さしてもらった。

 ちなみに、なぜ、わざわざ"May I help you?"と英語で書いたかというと、中学校の始めの方で習う言葉なのに、高校時代に使っていなかったので忘れて、しばらく"Do you need any help?"と訊いていて、そんな便利な言葉と邂逅を果たしたのは、かなり経ってからのことだったからだ。実は、高校在学中に"How are you?"も忘れた。

 「カラクェン?」と、語尾上げで訊いたから、おそらく本人も発音に自信がなかったのだろう。しかしいつも、道案内をすると、後になって、もっと適切な道がなかったのか自問自答してしまうが、今日も後楽園の正しい発音を教えれば良かったなと後悔した。