身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

世の中、頭がいい人がいると救われません?

 先日、障害者手帳を落としてしまい、警察から届いていますと連絡があった。実は落としたことも判らなくて、届いてホッとした。警察署に、拾った人に礼を言いたいと言うと、届けたのは近所のドラッグストアなので礼は大丈夫ですよと言われる。

 しかし私は欲をかいてしまい、近所のドラッグストアなら警察署に届けずに私の自宅に連絡をくれればいいのにと思った。そして、今日、そのドラッグストアに買い物に行ったら、拾ったという店員さんがいて、取りに来ると思ってすぐには届けなかったんですよと言う。

 何も考えずに警察に届けないでくれよと思った自分を恥じた。以前、書いたが、私はサラリーマン時代、机に向かう仕事だったのだが、どうして、そういう不合理な処理をするかなぁと思うことがあり、「世の中、バカが多くて疲れません?」というTVCMに共感していた。逆に、ぼんやりと道路工事を見ていたりすると、彼らの本分は身体を使うことなのに、どうして、そんなに要領よく綺麗に仕上げるのだと思うことがある。

 今回の店員さんも、おそらく店舗レイアウトを考えたり、レジを打ったりするのがライトスタッフのはずだ。店員なので客を思うのも仕事のうちだと傲慢に考えても、それを実行するのには、やはり、取りに来るかもしれないと考える頭の良さが必要だ。世の中、配慮を実行できる人がいて救われたと思う出来事だった。

 

 

P.S. 今回のことで鷺沢萠著『ほおずきの花束』(「海の鳥・空の魚」所収)に書いてあることを実感した。本は読んでおくものだ。そして、それを体験せずして書ける小説家というのは凄いものだ。