身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

私ですか?

町へ出よ、キスをしよう (新潮文庫)

 昨日は喫茶店鷺沢萠著『町へ出よ、キスをしよう』を持っていった。最初、読んだときはツマンナい本だなぁと思ったのだが(筆者初のエッセイ集だそうで、こなれていないのだろう)なんか読み残したような不思議な感覚を覚えたのだ。

 いい歳をして女子大生と同じ程度の頭というのは恥ずかしいが、所収の「キリンさんに連れられて」を読んで、あるある… と思った。筆者は「赤い靴はいてた女の子」は「キリンさんに連れられて行っちゃった」と思い込んでいたそうである。しかも向田邦子さんのエッセイにも同様な現象(?)が記されているそうだ。

 私もあるよ、そして、例えば… と思ったとき、その対象が、この本にも記されていた。英語の専門家としてどうかと思うが、私は英語をカタカナで覚えている。そして、「フェアウェル・パーティー」を「フェネラル・パーティー」だと思っていた。まぁ、葬式でも酒を飲むしな… と疑問に思わないのが私の凄いところ。

 そして、私が間違えた言葉も、もうひとつ本書の中に出てきた。スティーブン・キングの小説『ペット・セマタリー』である。学生自体、教材に、たまたま「ペット・セラピー」という単語が出てきた。しかし、この単語が頭にあったばかりに「ペット・セマタリー」と言ってしまい、会話はトンチンカンに。

 鷺沢萠氏はロシア語が専門だが、それ外国語学習者として判る! ということが多々ある(引用しようと思ったが、本書に書かれているエピソードではなかった)。また、日本語の例として挙げる単語でも、それってみんな間違えてるよね! と思うことがある。鷺沢萠は東京育ちで横浜に住んだことがあり、私は両親が東京と横浜の出身なので、語彙が似ているためだろう。

 しかし何度も書くが、こんな親近感を覚える作家の本を、どうして同時代に読んでおかなかったのか悔やまれる。病気だったから仕方がないのかもしれないが、あまりに勿体なさすぎる。生きているうちに会いたかったよ。