身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

人は見掛けによらない。

 今朝は午前9時過ぎまで起きられず、かといって熟睡したという心地よさもなく、また、このままでは勤めなどできないと慌てて保健師さんに電話をしてしまった。

 こんな私でも、かつては、午前9時に会社に行き、残業をしても午後9時ころには帰り、土曜は家事をして日曜は外出するという日常を送っていたことがある。あるからこそ、今の自分が何もできなくて焦る。

 それから再び正午まで寝落ちしてしまった。寝ると恐怖で目が覚める。最近になって、やるべきことができず、自分の存在が無に帰すのが怖いのだと判った。

 日ごろから書いているヒューマンダスト(人間のクズ)感に苛まれながらも、自宅マンションの1階にあるコンビニコーヒーを買いに行く。

 そのコンビニにはコーヒーマシンが2台あり1台が空いていたのだが、空いていない方のコーヒーマシンを待っている女性が1人。

 なんで空いている方を使わないんだろう… と思って空いている方のコーヒーマシンにカップをセットしようとしたら、その女性に、マシンの蓋が空いているようですよと言われた。

 その女性は凄く険しい顔をしていて、なんか、話しかけにくそうな人だなと思っていたのに、向こうから、しかも親切な言葉を掛けてくれて驚いた。

 そして思い出したのは、かつて私が国際電話会社に勤めていたときのこと。上司は、平気で部下を怒鳴り散らす女性だった。私が20代で彼女が30代くらい。内勤なのに、いつもビシッとスーツを着ていた。その女性が、休み時間、ものすごく楽しそうに電話を架けているのだ。

 コワモテの人に優しい人が多いというが、それは、男性に限った話ではないのだなぁと思った。かくいう自分も、20歳代は猛勉強をして自転車通学をして、身長179㎝にして体重60㎏、友人が、私と怖くて話ができないといっている女の子がいるよと言っていた。

 厳しい顔をしている人は、他人に厳しいのではなく、自分が置かれている環境の厳しさだったり、自分への厳しさが顔に出ているのかもしれないと思った。