身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

過労で頭は世界を駆け巡る。

 今日は午後2時まで寝たのにあいかわらずフラフラで、掛かっている精神科医に伝えたところ、過労ですね、ビタミン剤を出しておきますとのこと。

 さて、先日、TVで商船(外航貨物船)のドキュメンタリー番組をやっていた。ドキュメンタリーながらバラエティー番組の時間に放送されるものなので、なかなか面白かった。そういえば、最近「海のロマン」という言葉を聞かない。

 番組の名前は忘れたが、日本郵船の"NYK ADONIS"という本船のアジアヨーロッパ航路の終点から始点までの密着取材だった。ちなみに番組では船名の"NYK"が省かれていたが、そこも含めて船の名前である("NYK"は"Nippon Yusen Kaisha"の略)。

 私自身、この船に船積みをしたころがあるのでワクワクだった。日本の船会社の運賃は高く、客から指定がないときは(日本郵船の系列会社にいたのにw)香港や台湾の船会社の船に積んでいたから、日本の船会社の船というのは、ちょっと贅沢な気分がある。

 船会社でバイトをしていたこともあるし、特に目新しい出来事はなかったが(番組内で船員が積み荷をザックリ判っていたように、私も彼らの仕事をザックリと判っている)その職に就いていたときの自分のことが思い起こされるようになった。

 それ以来、ずっと、頭の中で、「B/Lの確認おねがいしま~す、本船"NYK ADNIS"のTokyo、CY受け40-feeter 1本~」などと株屋のように電話をしている情景が浮かんでいる。そして、ちょっとした友達と飲みに行く話をしていたら、その人は今、私がやっていた、そういう仕事をしているという。

 やっぱり海の仕事は楽しかった。メーカーに入って、扱うものが高価なものだったので海だけではなく空の仕事(飛行機のこと。ヨーロッパまでだと、運賃は、だいたい船の7~10倍)もするようになったが、やはり、それらの仕事が好きだったんだな。

 今、旅行記のBlogなども読ませていただいているのだが、地図を見なくても、ある程度の位置関係が判るのが楽しい。冒頭のTV番組内でもあったが、船は寄港地の順番が前後することがあるのだが(日本でも東京と横浜ていどだったら入れ替わるのはザラ)位置関係を知ると、船の動きが判って楽しい。

 旅行記のBlogを読ませていただいて、勉強しておいて良かったなぁと思うのは、その地方の特産品を知っていることだろうか。何々が美味しいと聞いて、あぁ、これが獲れるところだからな… あれが獲れるところと近所だからな… と思う。

 こういうことが腑に落ちると、義務教育で社会科を習っておいて良かったと思う。政治なんて日本だけ知っていればよいと思っていたが、先の貿易の仕事をしていたときでも、アメリカの大統領が変わっただけで日本の輸出体制も変わる。

 戦争やテロ、天災によって自分の仕事が振り回されたときにはボロボロになったが、逆に、それで(地理とか歴史・政治経済という狭い話ではなく)社会というものの学習の必要性を実感した。

 勉強をしておけば、そのときに仕事で抱えていたトラブルに、もっと柔軟に対応できていたのになと思うことは多々あるが、今になると、少し楽しい思い出でもある。しかし、当時は疲れたなぁと思うのだが、今は、もっと疲れている。