身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

子供を追い詰める「家族だから」という呪文。

 今日でBlog継続1年目、明日から2年目に入る。今日は鷺沢萠『駆ける少年』を読んだので、その書評というか感想を書いて「身の上話」の原点を、明日は「身の上話」を書く理由を書こうと思ったのだけど、ちょっと力が入らない。

 

 また魘されて目が覚めた。かつて「メンヘラは言葉に囚われる。」というエントリーをアップしたことがあったが、今日は、言葉に囚われてしまった。

 昨日は、書いたその日に、さっそくTVドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」の8月14日放送分を観た。そして、自分の経験と重なって夢にまで出てきた。

 何年も前に出奔したが精神を病んで生活が立ち行かなくなり生活保護を受けようとした青年の話だった。彼は、家族との連絡を異様なまでに拒む。

 そして、役所が戸籍をもとに扶養家族を探したところ、医師として名誉がある地位に付いている父親が見付かる。

 その父親は息子を扶養すると言い「家族ですから」を連呼する。また、話が息子の行動に関わることになると鋭い目付きになる。

 そして、一刻も早くと息子に会いに行く。脚色として追い込むという感じ。さらに親から逃げて電車に飛び込んだ息子を「構ってほしいだけ」と切り捨てる。

 「構ってほしいだけ。」この言葉に、私は過剰に反応してしまった。かつて、私が、物を略奪して逮捕されたとき、面会にも来なかった父親は1通の手紙を寄越した。

お前は今だに自分のした行為を反省しないで他人のせい(傍点あり)にしていて
それを直さなければ駄目だ.
人の言うことを聞かず、親は熱田先生のような良い医者に当たって喜んでいたのに.
自分の痛い処を突かれ、不満に思って医者を変えるなんて
言語道断です.
お前を蘇らせようとしてちゅうこくしているのに独断的に変えるなんて.
自分の幼ない時の原点に帰らないと誰も相手にしなくなるよ.
お前のこんなつまらない万引で障害者にかまけて
自分はスリルと快感と親の気を引こうとしたって犯罪は絶対に
してはいけない.(原文ママ

 熱田先生というのは、私の精神病が心疾患にまで至り、半年で総白髪になっても「ゴロゴロしたいための言い訳」と言い、気が狂いそうと言っても外出を強要した医師である。

 私は、肉体症状が出てもなお「凍っていてシャリシャリしている食パンもオツなものです」とバカにするような態度に腹が立っているのであって「痛い処を突かれ」た訳ではない。

 また、万引きも、正気を保つのに必死な状態で医師に外出を強いられたために感情が激して略奪してしまったのであり、「スリルと快感と親の気を引こうと」したわけでもない。

 電車に飛び込んでも「構ってほしいだけ」と息子のことを簡単に括ってしまう父親が、どうしても私の父親と重なって見えるのだ。

 そこで、もうひとつのキーワード「家族ですから」に繋がる。これも、たびたび書いているが、私は、室温が40℃を超える部屋に閉じ込められて水も飲ませてもらえず、熱中症で頻繁に倒れた。

 テレビも見せてもらえなかったので、小・中学校では友人たちの話題に付いていけず、しかも「お前のカァちゃんキチガイ」と虐められた。

 また、私はテレビゲームというものをしたことがない。これも、買ってもらったことがないし、そういうものを持っている友人とは付き合わさせてもらえなかった。

 なので、大人になっても、やり方が判らないし、楽しさが解らない。

 他にも、TVと同じで、自分たちは乗るのに、私は、家の車には指1本、触れさせてもらったことがない。仕事も、あれは駄目これは駄目… 枚挙に暇がない。

 残業が月に200時間を超えても遊んでいるとされたことも既に書いたが、新卒の給料で、毎日、遊んでタクシー帰りができるはずがないと思いを馳せないのだ。

 そのくせ、私を家から追い出して、私が独り暮らしを始めても、私の留守中に上がり込み、わざと家を荒らしていく。言い分は「整理してやった。」

 今でこそ家族による虐待というものが明るみに出ているが、当時は、誰も信じてくれなかった。

 中には疑問を持つ人もいたが、そのときには私の親が使ったのが「家族だから」という言葉だ。

 家族だから子供の不利に働くわけがないという意図と、家族の問題だから口を出すなという意図、両方があったと思う。

 しかし、本当に愛情と理解で結びついている家族なら、敢えて「家族だから」と言葉にすることは必要ないだろう。

 「家族だから」という言葉は、子供を「構ってほしいだけ」「ゴロゴロしたいだけ」などと決め付けるような親が、他人の意見を排して正当化する言葉のように思えてならない。