身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

腑抜けの苦しさ。

 今日の東京は朝から雨で、水道の蛇口をひねったら、久しぶりにお湯ではなく冷たい水が出た。今日はゆっくり本が読めると思ったのだが、なんか力が抜けてしまった。

 昨日までの異様な疲れの反動なのか、眠くはないものの、なにか力が入らない。今日の、このBlogのエントリーも、やはり腑抜けている。申し訳ない。

 

 さて、鷺沢萠先生の遺作エッセイ集『かわいい子には旅をさせるな』を買った。一日千秋の思いで待ち望んでいて、昨日、届いた。

かわいい子には旅をさせるな

 

 Amazonに新品に近いコンディションで出ていたので買ったのだが、積み重ねて置かれていたのか上部が少し凹んでいるものの、帯も付いているし、なんと愛読者カードも入っていた。

 遺作ということで、愛蔵版的な意味があるのかもしれない。読むほうにとっては難なのだが、本文もアート紙だ。前の持ち主が、未読ではなくコレクション的に持っていたものではないかと思う。

 最近の私のBlogで、これは静岡市立図書館のニュースと関係しているのかもしれないが、「本は財産。」というエントリーが読まれている。この本は、こうやって扱われるものだという見本のようなコンディションだった。

 その状態の割に価格が安いのは、読んで納得だ。内容が薄いという言葉があるが、力が入っていないのだ。鷺沢先生は、比較的、考えさせられる文章を書く人なのだが、それがない。

 そして、再びAmazonを見ると、やはり、骨太の作品の方が価格が高い。かつて、何かの雑誌で、あるベストセラー作家が、いくら売れても1年後に古本屋で100円になっちゃなぁ… といっていたのを思い出す。

 私のBlogにおいても、最初は読まれるエントリーが迷走していたが、最近になると、真面目に考えた文学的な文章が読まれている。私にとっては喜ばしいことだ。そして、今日、文章に力が入らなくて心苦しい。

 この程度のBlogを書いている人間でさえ苦しいのだから、鷺沢先生が筆力の低下のために死を選んだとしたら、なんとなく理解できる。過去の作品を読んでも、鷺沢先生、苦しまれたんだろうなと思う。