身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

物にコダワリを持つこと。

 今日、ネット通販でユニクロから買ったズボンが届いた。私はウェストが72㎝→120㎝→100㎝と大きく動いている。いやぁ、ウェスト100㎝(体重105㎏)の現在も身体が重いのなんのって。しかし、ネット限定とはいえ、ウェスト100㎝の服が既成であるのが驚きだ。

 幸い、それだけ背があるので、ズボンの裾を上げないで済むのだが、通販サイトを見たら、そんな裾が長い服を誰が着るんだと書いてあって、詰めればいいのに文句をいう人はいるもんだなと思った。

 さて、今日、新しいズボンが届いて、古い服を処分。ウェストが100㎝になってからユニクロ以外にもファスト・ファッションを使うようになったのだが、2年も経たないうちにボロボロだ。

 120㎝のときは着る服がなく、仕方なく高い服を買っていた。もう数年前なのに、生地に毛羽立ちもなく、捨てるのが勿体ないが、さすがに、これからウェストが20㎝は増えないだろうから、惜しいけれど処分。

 今、色々と物を捨てている。映像はストリーミングで観る時代になったのでDVDを捨てた。3日前のエントリーに中古CDを安く買ったと書いたが、友人にSpotifyというストリーミングサービスは只だしCDを買うのと変わらないといわれ、試してみたら、仰る通りだった。

 唯一、残っているのが本。電子書籍があるといっても、古い雑誌は読めない。これもスキャンを試みたが、すーさん (id:enchanted00)にファイリングの方が良いといわれて、辛うじて残っている、いや、踏みとどまっている。

 最近、DVDの特別BOX入りとかCDの特装版とかないしなぁと思う。書籍も初版ハードカバーが古本で送料込み300円とかで買えてしまうので(なのに文庫本の新刊は680円程度からというのは何かなぁ)雑誌と併せ捨てるのが悩むところ。

 私は、物にコダワっていますね、センスが生きていますねと言われるが、今の時代、そんなものは数年で陳腐になってしまう。私の持ち物で最たるものがカメラ。

 デジタルの時代が来るとは思っていたが、フィルムの時代が、こんなに早く終わるとは思わなかった。フラッシュメモリの容量が1GBない時代で、コンパクトフラッシュフォームファクターにHDD(ハードディスク)が入ったマイクロドライブというものが出ていた時代だった。

 HDDといえば、携帯音楽端末iPod記憶媒体もHDDだった。ネットで軽く調べた限りでは、HDD内蔵iPodが販売終了したのは4年前とのこと。たった4年で媒体がフラッシュメモリに変わり、さらにストリーミング(媒体がなくオンライン)に変わっている。

 ちょうどキャリコネニュース「20年前の人に言っても信じてもらえないこと『Amazonが日本を支配』『昔の軍艦が大人気』」というエントリー? 記事? アーティクル? が飛び込んできたが、次の段落は、まさに、今、書こうとしていることと重なる。

Amazonが日本を支配する」という書き込みもある。恐らく20年前の私たちは、「今ではネットでほしいものを買えるし、注文したらすぐに配送される」と聞いても、SFの中の話と捉えていたんじゃないだろうか。

 私は、このエントリーの冒頭で、通販でウェスト100㎝の服が買えるなんてと書いたが、たしかに、ネットの通販で服が買えること自体、20年前には予想していなかった。

  今では通販といえば"Amazon"だが、当時は「通販生活」。これも、職業柄ファクシミリを持っている作家にコダワリの物を売ることで成功した。作家というコダワリがある人が買っているものを、あなたも買えるのですという売り方だ。

 今は、コダワリの物だけではなく、日常品もネットの通販で買う時代。田口ランディさんの『コンセント』の、コンセントに繋がったときだけ動く青年ではないが、今の時代、ネットに繋がっているときだけ社会生活を送れるのかもしれない。

 私は感じた。どうせ、良い物を持っていても、それが長く使える時代ではないのだ。まだ、服なら、コンサバとかアンティークとかいって通じるかもしれないが、他の形があるものは、時代とともに淘汰されていく。

 一昨日、東京都庭園美術館で覚えた感慨も、それに似たものかもしれない。激動の昭和を生き延びて、朝香宮がなくなっても東京都港区という場所に残っている建物…。

 数年前まで、渋谷の場外馬券売り場の前に豪農の家が残っていたのだが、渋谷南東急ビルという建物になってしまった。江戸時代に建った麻布仙台坂上にあった私の生家も、もはやない。

 こんな時代、良い物を手に入れても、代々、受け継がれるどころか1世代も持たない。そんなことを思うと、物にコダワって良い物を買おうという気持ちが、ひどく馬鹿らしく感じるのだ。

 

…なんか、アクセル全開で行ってしまいました。流れるようにザッと読んでいただけたら幸いです。