身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

寝ることに対する恐怖と100回オジサン。

 もう何ヶ月も、朝の4時ころ、汗をビッショリかいて肩がパンパンに張って目が覚める。

 しかし、どうしても起きることができなくて、下着が替えられない。汗をかいたま横になっている。

 起きられもしなければ眠れもしない。魘されるように横になっていて、起きられるようになっているときにはボロボロ。

 

 そして私は数年前のことを思い出す。毎日、心臓が針の筵の上で転がされているような感覚で、1日、起きられないのだ。

 それを医者に訴えたら、ゴロゴロしていたための言い訳と言われた。

 夜になると眠れるとかというと、寝付いて1時間もしないうちに、その感覚で目が覚めてしまう。

 それも医者に訴えたら、夜更かししたいための言い訳と言われた。

 半年ぶりくらいに区役所に手続きをしに行ったら、担当の保健師さんにエッと言われた。神が総白髪になっていたのだ。

 それでも、医者の言うことは変わらない。恐怖でシャワーが浴びられなくても、社会人は次の日があるから億劫でもシャワーを浴びるんです。別に億劫なわけではない。

 恐怖で起きられなくて朝食も取れない、それに食パンは凍っている。そう言うと、凍った食パンもシャキシャキして乙なものですと言う。

 医者は、とことん馬鹿にしている。

 のたうち回っている人がゴロロしている人より偉いわけではないとも言われた。

 しかし、医者を変えようと思っても、実家から、「親は良い者に当って喜んでいるのに痛い処を突かれて医者を替るなんて言語道断」(ママ)という手紙が来る。

 一人暮らしをしているのに、どうして、私の生活が解るのか。1日に100回、電話をしてくる、通称100回オジサンなる人物が大きく関わっている。

 彼のことは改めて書くことにするが、実家の親には私のことを悪く言い、私には親のことを悪く言い、互いの反感を煽っていたのだ。

 100回オジサンは、1日に100回電話をして来たり、朝の5時に予告なく私の家に来ては玄関ベルを連打したりする。

 彼が、1日に20回ぐらい電話をしてきては、今、親から、買い食いをしたら、どうなるか解っているのだろうなという電話が架かってきたと言う。

 100回オジサンは、親には、私がゴロゴロしていて、1食も作らず豪華な買い食いをしてと言っていたようだ。

 実際は、私は、1日中、針が筵の上で転がされているような苦しみで食事も摂れず、1日に1回、コンビニで茶色い弁当を買っていただけだ。

 そして、親から電話があったと聞くたびに、私は恐怖になった。医者に言っても、金を出してくれる人の言葉は絶対と言う。

 私は、なんとか医者を変えて、薬を出してもらい、今がある。当時に比べれば楽になっているが、まだ苦しい日が続いている。