身の上話

身の上に起こった、嘘のような本当の話。タイトルは佐藤正午作品から。

行ってみた。

 昨日・一昨日と書いたピアニストのコンサートに行ってきた。私は危ない橋は渡らない人間だ。それが、行って良かったのかなぁと思う。諦めが悪い私は、断られないと諦められない。そこで、ギリギリの時間にメッセージして、空席なしといわれることを期待した。そうしたら「気を付けてお越しください」と返ってきて、行くことになってる? という有様。

 門前仲町の駅を降りて高速をくぐり5分ほど行ったところに、会場となるビルはあった。建物が見付かるか判らなかったのだけど、住宅地の中、スタジオ風の建物はそこしかないので、すぐに判った。会場は2階らしい。階段を上りドアを開けると、靴を脱いでスリッパに履き替えてくれと言う。

 その女性が受付にいて、受付を雇えるほど盛況なんだと思ったら、40席はあろうかと思える客席は、ほとんど埋まっている。しかし、観客を見ると男ばっかり。女性は着物を着た女性が1人だけ。あの人が招待だったら、ぜんいん男だよねと思う。しかも、明らかにクラシックなど聴かないだろうという人たちが一番前の席にいる。

 あらら、これは新種のアイドルのコンサートに来てしまったのかと戸惑う。私は異常なあがり症なので、場違い感で汗がたらたら、鼻水まで出ている。上着を脱ぐ間もなく開演。冒頭に挨拶でもあると思い、そのときに上着を脱ごうと思ったら、脱ぐ機会を逸した。挨拶もなくピアニストとヴァイオリニストが現れ演奏に。

 椅子の座り心地が悪く、姿勢が定まらないから、なおさら汗をかく。しかも、音の届きが前の席より悪い。姿勢を色々と正しているうちに休憩となった。感じとしては、あっという間で、1/3くらいのところで休憩があるのかと思った。休憩時間も、あっという間に過ぎた。トイレに行く人は1人くらい。

 後半の演奏が始まる。これが目的で来たと言っても過言ではない、ヴェートーベンのスプリングソナタが始まる。これ、大好きなTVドラマ「マエストロ」でエンディングに使われてるんだよね。作中に派手な音で良く鳴るとかいう表現が出てくるのだが、今日の演奏は、すごい派手な音だ。ピアノも通奏低音じゃない。

 演奏が終わる。ただ演奏が終わっただけで、帰っていいのか解らない。一番前の、そのクラシックを聴かなそうな人の1人が拍手をしている。んん? アンコールがあるの? と思ったら楽師さん再び登場。まさかのビートルズのイエスタディ。うん、クラシックのほうが上手いよ。

 そして閉幕。んんん? 始まる前になかったのだから挨拶はないの? と思ったら、会場を後にする人が。ピアニストは、ドアの前でCD売ってますと言うだけで、何かしている。先ほどのクラシックを聴きそうにない人はピアニストを捕まえて写真を撮っている。戸惑いながらも帰り支度を。なんか、あっという間だったなと思う。そんなに短時間で、こんなに金を取るのかと思ったが、休息が入ったものの1時間以上たっている。

 なんとなく物足りなさを感じながら靴を履く。ピアニストは常連らしき客と軽く会話をしたりしている。なんか、そっけもないコンサートだよなと思う。しかし、生演奏はCDを聴いているよりも面白かった。階段を降りようとしたら、ピアニストが出口に戻ったよう。ちょっと挨拶しようと思い、顔を出しに戻る。

 あぁ、Twitterのメッセージの… とピアニストが言う。もう、私は緊張しているから、はにかむだけ。軽く頭を下げて帰ってきた。そのとき顔を見たら、思ったよりケバい人だった(笑)。しかし、ああいうファンがいるのだったら、それは客と距離を置いた方がいいのかなと思う。その、クラシックを聴かなそうなファンとは、帰りの電車が一緒だった。やはり、あれ以上いても、何もなかったようだ。